◆Ever 17 -the out of infinity- (KID) |
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このゲームは、間違いなく、歴史に残るような快挙を成し遂げた傑作ソフトだと思われます。
ただし、少しでも突っ込んだ感想を書こうとすると、それは著しく「ネタバレ」となってしまうという
諸刃の剣な部分を含んでおり、ネタバレにならない範囲で感想を書いていくつもりです…。
ストーリーの大筋は、公式にもあるとおり、
2017年5月1日、水深51mにある海洋テーマパーク「LeMU(レミュ)」に
突然取り残された、一週間という期限内での男女7名の脱出劇を描くわけですが。
この際「取り残されたのが若い男女ばかり」というお約束部分に関してはツッコミません(マテ
公式HPには、このゲームのジャンルは「恋愛アドベンチャー」と一言だけだったり。
…あれ? そうなの??
これは本当に恋愛アドベンチャーなのか?と考えてみると…ふむ。
このゲームは「恋愛アドベンチャー」としての性質は確かに持っています。
しかし、現実には、その遥か斜め上を行っていたように思われます。
このゲームでは、その取り残された7名の男女の中の男2名を操作してストーリーを進めていきます。
ゲームの序盤に「俺(大学生)」と「ぼく(記憶喪失の少年)」の選択肢があり、
それによって、このどちらかのキャラクターの視点を通してストーリーが進んでいくわけですが…。
このどちらをプレイするかによって、恋愛ゲームで言うところの攻略可能なヒロインも変わってきます。
「俺」視点でしか登場しないヒロイン、「ぼく」視点でしか登場しないヒロイン。生体反応の謎…はて?
最終的に、どちらの視点でも「6人」しか存在しない事になります。
このゲームには「盲点(気づかずにうっかり見落としてしまう事柄)・ずれ」が数多く存在しています。
大概「あれ?」と思う事に実はちゃんとした理由があります。
でも、その段階ではまず気づきません。
製作者がそうなるように仕向けたんでしょうが、
この「盲点」の使い方がそんじゃそこらじゃなく上手いです。
そうして、ゲームを進めていく内に、次第に製作者が張った網の中に捕らわれていきます。
このトリックは、公式にも書かれている通り最後の通称「ココ」シナリオで暴かれるわけですが、
それまでの流れが非常に素晴らしいです。
良質の推理小説を読んでいるような、そういった清々しさを感じました。
ゲーム中、ある登場人物によっていきなり「第三視点」なる概念が語られます。
もちろんこれはプレイヤーが操作している主人公が知らないといけない概念でなく、
これは「プレイヤーが知らないといけない概念」となります。
これがシナリオの中核を担っているという事は理解できました。
この概念もある程度理解出来て、何のことを指しているか分かっても、
実際にどう謎解きに関わってくるのか…最後の結末を見るまで分かりませんでした。
「ココ」編において、あるキャラがあるシーン、ある相手に向かって語りかけてくるのですが、
それはまさに「鳥肌もの」でした。
それを合図とするように、一気に怒涛の謎明かしが始まります。
…そして全てを知った後もう一度プレイしてみると、
「なるほど、そうだったのか」と知る事が沢山あります。
二度どころか、三度も四度も美味しいシナリオです。
…それは置いておいて。
それにしても、えらくほのぼのとしてるなぁ、と(おぃ)。
お笑いあり、涙あり、そのほのぼのぶりは、どっかのホームドラマのようです。
この登場人物達は脱出できないと本当にあと一週間で死んでしまうという状況を理解してるんでしょうか。
危機感が見事に足りません。
登場人物には、そういう状況を理解しつつ、このように振舞えるような精神的強さがあるとはとても思えません…。
(…な例外はあるんですが)
ついでに隔離空間における空気と食料の問題。
はっきり言って、これに関する問題はゲームの中では事実上起こってません。
そういったドロドロ部分が見れなかったのは、至極残念ではありますが、
世界観のため、登場人物が物語として必要最低限な人数だった。
それ(サバイバル)が製作者の描いた物語の主テーマではないという事で、仕方なかった気もします…。
(そういう状況に陥る可能性は充分にあったわけで、少しは触れてもらった方が楽しかったのですが、
正直そこまで手が回らなかったのでしょう。)
恋愛ゲームとして見ると、「俺」視点における主人公は、なんとも救われないです。
とりあえず、全ての謎を知るまでは、「武ぃぃぃ!」と涙なしには結末は見れません。
「ぼく」視点に関しても、なんというかハッピーエンドにはなるんですが、
モヤモヤしたものが最後まで残って素直に喜べません。
まぁ、『真のグッドエンドは「ココ編」であって、それ以外はオマケ』なんでしょう。
うむぅぅ。
このゲームは、まず「世界設定・状況設定ありき」であって、
キャラクターはその世界に合うように作られた節があります。
これだけのシナリオを書いたのに、キャラクターの練りこみが足りなかった…。
キャラの「信念」というか、そういったものはあまり感じられませんでした。
非常に面白い「ギャグ」も数多くありますが、
それはどちらかというとキャラに依存しない「荒唐無稽」なギャグである場合が多いです。
キャラクターの性格に関しても、どうも「取って付けたような個性」ばかりでした。
状況に流されている…というか、状況(シナリオ)に従って動かされている。
(いや、これは一部のキャラには正しいのですが(汗))
あるキャラの熱狂的なファンには文句言われるかも知れませんが…。
そのため「恋愛アドベンチャー」としての魅力は、少なかったように思えます。
そこが少し勿体無かった感じもします。
…しかし、こういった不満点は実のところ、どうでもいい些細な不満点です。
それだけの破壊力が、このゲームのシナリオには存在します。
しかし、プレイするからには「ココ」編をクリアーしてもらわなければ、
このゲームの素晴らしさは少したりとも理解出来ないと思います。
このEver17というゲームは「恋愛アドベンチャー」でありながら、
「恋愛」とは関係ないところで、このゲームの尋常でない傑作ぶりがあったと思えます。
以上、ここでは、ネタバレに関しては一切触れませんでした。
推理小説と同様に、このゲームに関してネタバレは書くべきじゃないと思います。
こればっかりは実際にやってもらい、体験してもらうしかないと。
このゲームの結末を見たとき「やられた!」と叫ぶか「そんなのアリか!?」と叫ぶか、
それはアナタ次第です…
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